ロゴ
<前編>ビジネスで目利きできる能力(新規事業人材の能力-3)

<前編>ビジネスで目利きできる能力(新規事業人材の能力-3)

今回のコラムでは、新規事業人材の能力の3つめ「目利きできる能力」について考えてみます。前編、後編の2回にわたるコラムになりますが、お付き合いのほどよろしくお願いします。

「目利き」という言葉は、最近ではあまり使われなくなっている印象があります。鑑定団が骨董品や絵画を「目利き」する、とか、料理人が食材を「目利き」する、というような表現をします。その道のプロが行う目利きという技術をAIに行わせようとする試みがあります。

例えば絵画コレクターが、行方不明だった幻のピカソの絵画を手に入れたと言って持ってきて、AI鑑定団が目利きする場合を考えてみます。AIは「行方不明だった幻のピカソの絵画」の制作年、サイズ、画材、絵具、色合い、図案、筆遣い、サイン筆跡などあらゆるデータを学習しているため、瞬時に本物か偽物かの判定を下します。

次に、料理人が市場に売られている魚の鯛を、食材として目利きする場合を考えてみます。お造りで提供する場合、焼き物として提供する場合、煮付けにして提供する場合とでは、食材として選ばれる鯛は異なります。煮付けに適した鯛をAIに目利きさせる場合、過去に蓄積されている「煮付けに適した鯛」の鱗やヒレの状態、目の色などの画像データ、触覚データ、弾力データ、臭いデータなどの膨大なデータをAIに記憶させることからはじまります。AIの学習を完了させて目利きをさせてみると、瞬時に目利きをして最高の「煮付けに適した鯛」を選び出してくれます。

どちらの場合も、AIが最も得意とする領域で、それほど遠くない将来、目利きという作業を人間が行うことはなくなるのかもしれません。このようなAI目利きの構造自体はシンプルなものです。「行方不明だった幻のピカソの絵画」とか「煮付けに適した鯛」という正解がはじめに存在し、その正解をAIに記憶学習させ、それに辿り着くための複雑で膨大な手順やプロセスをAIが瞬時に行う、という構造です。「これが正解だよ」と最初に正解を提示し、AIに学習させるのはあくまで人間です。

絵画鑑定の場合、もし誰かが、「行方不明だった幻のピカソの絵画」のウソの情報をAIに学習させたとしたら…。このような問題は、職業倫理とか、コンプライアンスという領域で扱われます。

料理人の食材目利きの場合、関東の料理人と関西の料理人のそれぞれが、老齢の勲章料理人と若手の天才料理人のそれぞれが「煮付けに適した鯛」をAIに学習させたとしたら…。このような問題は、オリジナリティーとか、ブランドとか、カルチャーという領域で扱われます。

リジョイスコンサルティングでは、後者の目利きに重点を置き、AIが行う目利きプロセスではなく、人間が行う「正解の提示」能力を開発することを目的としています。

後編では、無限にある“アイデアの種”を、どのように目利きし、どのように選ぶのか、ということについて考えてみたいと思います。