研修の効果はいつ現れるのか
研修は「企画7割、運営3割」といわれます。企業の人事や社員研修担当の方、研修講師をされている方の多くが、企画立案や教材づくりに全体の7割の時間と労力を割いているということです。にもかかわらず、「期待したほど効果が上がっていない」と感じていませんか。これにはいくつかの理由があると考えています。
1、研修内容と実態にズレがある
内容はすばらしいけれど、現場の実態とかけ離れた研修を見かけることがあります。たとえば50人規模の企業研修なのに「上場企業のマーケティング手法を学ぶ」のようなテーマを選んでしまったりしていませんか。これでは効果が上がらないだけでなく、時間やコストを捨てているようなものです。本当のニーズをよく汲み取ってテーマ選定するべきではないでしょうか。
2、個に向けた研修になってしまっている
意識改革やモチベーション向上などの研修の場合、研修直後の受講者本人にはかなり効果があります。しかし研修翌日に現場に戻ると、受講していない周りの人たちの意識は元のままなので、結局、受講者本人のモチベーションが持続しないというようなことがよくあります。意識やモチベーションの研修は、個だけではなく、同時に組織に対しても行うべきではないでしょうか。
3、単発である
経営理念の醸成や意識変革を目的とした研修の場合は、単発で行ってもあまり効果は期待できないでしょう。日頃からの職場での声がけ、朝礼などを行っている会社では朝礼での声がけなどの方が、単発研修より効果的な場合もあるのではないでしょうか。改正された各法令の解説、新しい技術情報に関する研修などの場合は、単発かどうかということよりも、情報が新鮮なうちにスピーディーに研修を開催することに意味があります。
4、ニーズのすれ違いがある
企業が研修に期待するもの(研修ニーズ)は主に3つあります。1つめは現場や受講者自身のニーズ、2つめは人事担当者のニーズ、そして、経営者のニーズです。それぞれ研修テーマだけでなく、効果が現れる時間に違いがあります。現場や受講者のニーズとして代表的なものは「プレゼンテーションスキル」「整理術」「ロジカルシンキング」など、今現場で悩んでいることの解決を期待したもので、時間的には研修直後に効果が期待できます。人事担当者のニーズとして代表的なものは「新人研修」「管理職、マネジメント研修」「コンプライアンス」「職業倫理」など、中長期的に継続的に研修を行うことにより効果が期待できます。経営者のニーズとしては「経営理念の浸透」「社風の醸成」「次期幹部の養成」「組織改革」など、長期的なビジョンの中で効果が現れます。
研修テーマごとに、効果が現れる時間的な違いがあることを十分把握したうえで研修計画を立てることをお勧めします。
15年以上前のことです。私が勤務していた会社で、当時、役員だった方が講師を担当した社内研修がありました。何のテーマの研修だったのかあまり覚えていないのですが、講師が研修の最後にこんな一節を教えてくれました。
“ あなたが生まれたとき、あなたは泣き、人々は笑った。あなたが死ぬとき、人々は泣き、あなたは笑っている。そんな人生を送りなさい。
When you were born, you cried and the world rejoiced. Live your life so that when you die, the world cries and you rejoice. ”
とても印象に残りましたが、直後に何かが変わったということはありませんでした。それから15年以上経って自ら会社を設立する際、この一節から「rejoice」の言葉を貰って社名を付けることになりました。講師が伝えたかったこととは違う形になっているのかもしれませんが、こんなところにも研修の効果が現れるのだと思います。