他社では新規事業をどのように進めているのか?
同じことを繰り返すだけ、同じサービスを提供し続けるだけでは企業の未来がないということは、経営者ご自身が痛感されていることでしょう。また、現在のコロナ禍が終息した後、はたしてコロナ禍前と同じままで企業は存続できるのか、と不安に思われている経営者も少なくないでしょう。「我が社も新規事業に取り組まねばならない」とお考えになった方から問い合わせをいただくのですが、問い合わせ内容としては「なにをやるべきか」が最も多く、「どのように進めるか」「いつやるか」「どのように決裁するか」と続きます。今回のコラムは、多くの経営者が知りたい「他社では新規事業をどのように進めているのか?」についてです。個人の方は自分自身のキャリアは安泰なのか、という問題意識をもって「他の人はどのように自分の未来の決定をしているのか?」と置き換えて読んでいただきたいと思います。
新規事業の進め方が上手な企業は、企業活動におけるルーティンワークの一つとして新規事業を組み込んでいます。新規事業をやりたいとか、やりたくないとかいう次元の話ではなく、やっているのが当たり前の文化になっているようです。
新規事業に取り組む際のポイントとして、私は「種まきをする」イメージで取り組むことをお勧めするようにしています。新規事業とはいえども、まずは「開墾し、耕し、種をまく」ことからはじまります。事業アイデアが「いきなり閃いた」とか「天から降りてきた」のような話は本では読んだことはありますが、実際にはそういう経営者にお会いしたことはありません。どちらかというと、準備を整えて取り組む方が多い印象です。準備段階は小規模かつ多品種でスタートし、一発逆転新規事業(過度な選択と集中)は絶対やらない。これが新規事業の進め方が上手な企業の特徴です。
「いつやるか」について、自然や農業で四季を意識するように、四半期ごとに種まきをするぐらいのペースで行っているという企業もあります。四半期では、芽生えたものと芽生えなかったものの選別を行い、芽生えたものは次の四半期まで様子を見ながら育成を続け、芽生えなかった土地には別の種をまきます。電車内の広告、各種サイトやお店の衣替えのタイミングがだいたい1年に4回あり、そのタイミングで目に飛び込んでくる情報や耳にした情報を新規事業のアイデアづくりに活かしているのです。
この小規模多品種で行う段階で「なにをやるべきか(どんな品種の種をまいておくか)」について、やみくもに種まきをすることは避けるべきでしょう。もし、全く知識やノウハウがない分野へ種まきをするのであれば、参考となる考え方のひとつに、投資の銘柄選び(ポートフォリオ)の概念があります。IT、飲食業、金融業など業種別に選んでみたり、リターン期の長短などで組み合わせを考えたりするのは効果的です。
小規模多品種段階の決裁権限は各担当課長レベルでよく、部門長レベルでは進捗状況を把握しておく程度でかまわないでしょう。そして各部門である程度育った事業を選抜し、企業をあげて取り組む事業に限り、経営者、幹部を含めた会議に決裁を委ねるのがよいのではないでしょうか。
こうすることによって、新規事業に取りかかるハードルが比較的低くなり、新規事業醸成の企業文化を育むことにもつながります。大切なのは、新規事業の種をまき続けることです。
しかし、なぜ多くの企業で種をまき続けることができないのでしょうか。それは「芽生えた後に繰り広げられる素敵なイメージを想像できる能力」がないと「種をまき続ける」モチベーションが持続しないからです。新規事業が苦手な企業の特徴は、そういった能力を持つ社員が少ないことです。リジョイスコンサルティングでは、新規事業に楽しんで取り組むことができる社員の能力開発のお手伝いをしておりますので、ご興味があればぜひお問い合わせください。