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幹部をどう育てるか(幹部像について)

幹部をどう育てるか(幹部像について)

今回のコラムは、経営者にとっての重要課題のひとつ、幹部をどう育てるかについてです。

幹部を育てるためには、経営者がどのような幹部を育てたいのかというイメージをしっかり描くことが重要ですが、それだけではうまくいかないでしょう。幹部像には、「社員がなりたいと思う幹部像」を要素として含めておくべきです。幹部への一歩である管理職になりたがらない若者が多いというのは、経営者が抱く幹部像や管理職像と、若手が理想とする幹部像や管理職像とのギャップが表面化しているということです。「管理職になったら残業が増えて、休日出勤が増え、おまけに給料が下がった」という本末転倒な現象は論外ですが、采配権限や決済権限が全くない名ばかり管理職も問題です。幹部育成がうまくいってないという方は、一度このあたりの点検をしてみてはどうでしょうか?

ところで、経営者のみなさんは、本当に幹部像をきちんと描くことができているのでしょうか?あなたが考える幹部というのは、次期社長候補でしょうか?それともNo.2のことでしょうか?また、幹部には右腕、懐刀、参謀などいろいろなニュアンスを含んだ呼称がありますが、みなさん、これらの違いがイメージできているでしょうか?これらにはかなり大きな違いがあるので、一度整理しておきましょう。

こういう言い方をすると失礼になるかもしれませんが、血縁関係の「次期社長」というのは、必ずしも優秀な人材であるとは限りません。このことは歴代将軍の世継ぎ問題など歴史を見ても明らかです(もちろん経営者として優秀な方もたくさんいらっしゃいます)。血縁関係における事業承継というのは、経営者としての優秀さという基準ではなく、家柄とか血筋という基準を採用しています。これは必ずしも悪いこととは言い切れません。無用な後継者争いを未然に防ぐという効果があったり、譲る側の経営者にとっての心の安心に繋がるという意味では大きなメリットとも考えられます。

「No.2」というのは、たとえば副社長のようなイメージですが、トップに向いているかどうかはわかりません。経営手腕や人望の有無という資質の問題だけではなく、本人にトップになる意志がないという場合もあります。急に社長が倒れたりした場合、臨時に采配を振るうことができる実力は備えているのが「No.2」です。

「右腕」と「No.2」は少し違います。「右腕」は「No.2」と同様に、社長の補佐役としてはたいへん優秀なのですが、「右腕」というあくまで体の一部分であって、経営者本人にとって代わるものではないということを暗示しています。

「懐刀(ふところがたな)」というのは武術用語です。護身のために肌身離さず懐に忍ばせておく短刀のことで、特に女性が身の危険を感じたときに曲者を制したりするものです。転じてビジネスの場面では、いわば最後の手段として用いる人材のことを言います。確実に仕事をこなすという鋭い切れ味を持っているために、普段は表に出ることはないし、出してもいけません。経営者には、懐刀を使うタイミングかどうかを見極める力量と、懐刀を用いて確実に物事を制する技量が求められます。

「参謀」には、アドバイザーや策士というニュアンスが含まれています。俯瞰して第三者的目線でアドバイスをしたり、先手を打って相手を制する戦略を練ったり、最悪の場合に備えた対策をしておいたり、というコンサルタント的な役割を担います。経営者とヒソヒソ話をするようなイメージもありますが、ビジネス現場では多くの場合、経営者や社員と一緒になって計画立案したり、社員育成や指導をしたりします。

いかがでしょうか?これらのニュアンスの違いを理解したうえで、再度、幹部像を整理し、そのためにはどんな育成が必要かを検討してみることをお勧めします。また、その幹部像が、社員から見て「なってみたい幹部像」になっているかという視点もお忘れなく。

これからの不透明なビジネス環境を乗り越えるためには、できれば一種類の幹部ではなく、上記のようないろいろな役割の人材を揃えておくことが望ましいと言えます。また、このような多様な人材の登用においては、幹部は必ずしも常勤勤務である必要はなく、実力があればパートや業務委託でも登用するべきです。年齢、性別、国籍なども関係ないかもしれませんが、それを受け入れる社風かどうかが最大のハードルです。多様な人材の活用をダイバーシティといいますが、このような取り組みは社員のモチベーションアップにつながり、管理職や幹部になって会社を盛り上げたいという人たちが多くなることにも繋がるのではないかと期待しています。

次回は、経営者と幹部の対立について考えてみます。