序 気の赴くままに
気の赴くままに、くだらないことを考えていると思いがけず筆が進んでしまう。私と兼好法師は似ている。私は研修講師という仕事をしているのだが、“研修講師”と“兼好法師”は響きが似ている。それだけではない。研修講師とはいえども売れっ子ではないので特に忙しいわけでもなく、することもなく手持ち無沙汰な日々が多いという意味で、私と兼好法師の生活スタイルも似ている。
研修講師というのは、研修という場で「話す」仕事なのだが、研修の場で話せない話というのもある。話したいのに話せないという葛藤。それは「話したい」というよりは「喋りたい」という感覚に近い。その葛藤を解決するための手段の一つが「書く」ことである。普段あまり話すことのない私の感興を書いてみようと思う。まわりからは
「そんなことは頼んでいない」
「井内がまたヘンなことをやっている」
などと言われるかもしれない。そのようなリスクを負ってまで、なぜこんな馬鹿馬鹿しいことをするのかと冷静に自分を俯瞰してみると、なんだか狂気じみて怖くなるような心持ちである。